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セックスと後悔とひこうきぐも :: 2015/02/07(Sat)

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幸せだった頃の記憶よりも、その時に経験した後悔のほうが、色濃く記憶に残っていることが多い。





たとえば、あの夏祭り。
俺は十五歳のとき、中学最後の思い出作りをしよう、と誰かが言い出した夏祭りの催しに参加することになった。
俺の地元最大級の夏祭りで、県外からも参加者が大勢やってくることで、その日だけは閑散とした商店街も活気で色とりどりに華やぐ。
主にダンスや民謡舞踏などのお祭りで、俺たち同級生はみんなでヒップホップをやることになった。
学校がおわったあとや、土日の昼間や夜、時間をみつけては練習を重ね、ダンス部のある高校に指導をお願いして振り付けや曲を決めてもらったりと、めまぐるしく日々がすぎた。



俺はユウキのことが気になっていたけれど、一方で好きな女の子もいて、どちらもこのお祭りに参加すべくいっしょのグループで練習を重ねていた。
自分の気持ちに迷いながら、彼らやほかの友だちと昼夜問わずにすごす時間は、充実して、「青春している」感じが楽しくて、ユウキや好きな女の子といっしょに何かをしている感覚が幸福だった。



でも、夏祭り当日、俺はこらえきれずに泣いてしまった。
号泣といってもいい。
好きな女の子と直前までメールをしていて、ひどくつめたくあしらわれた直後だったので、彼女の顔をみたとたん、急に耐えきれなくなったのだ。
ぼろぼろ涙を流しながらその場に突っ伏す俺を、ユウキや他の友だち数人が慰めてくれて、こんな日に俺はどうして惨めにも情けないすがたを不特定多数のひとたちにみられなきゃいけないのかと思った。



八月のよく晴れた、暑い日だった。
太陽のせいでアスファルトは鉄板のように熱く、照り返しが肌をじりじりと焼いた。ひとが多くて、屋台のたこ焼きやら綿菓子やらのにおいがまざって気持ち悪い。
俺はこの日のダンスをほとんど思い出せないのだ。
おぼえているのは、あの時、膝を折って自分のふがいなさを呪って泣いた自分だけだった。





12:53。
BGMはMadonnaで『Iconic feat. Chance The Rapper & Mike Tyson』





それから、生まれて初めて泊まったビジネスホテルでもそうだった。
その日、俺は童貞と処女のどちらもいっぺんに失ったのだけれど、初めてセックスした男は掲示板で知り合った自称二十六歳の短髪の男で、なんとなくイガグリを愛想良く仕立てたみたいな雰囲気の、名前も聞いたこともない外国の煙草を喫って、香りのいいリップクリームを唇にぬった、サラリーマン風の男だった。



俺はそのとき、遠距離恋愛をしていて、会ったこともないそのひとに恋い焦がれているような世間知らずのガキで、だからその日は自分のもてあました性欲に簡単に負けた。
会ったこともないひとではあったけれど、それはもう、この世の終わりと言ってもいいほど好きだったし、自称二十六歳のサラリーマン風と舌を絡ませあって唾液を交換するようなキスをしているあいだじゅう、そのひとの事を思っていたし、自分から腰を振ってまんぞくげに微笑すら浮かべた目の前の男を、俺はそのひとだと夢想した。



奇妙で、息苦しくて、頭のおかしくなりそうな時間だった。
ひどく長いあいだ、サラリーマン風との意味のないキスや愛撫をくり返した気がする。
男がみたこともない茶色い瓶を俺にかざして、それを吸わせたあたりから、俺はぶっこわれた。
我が身をわすれ、夢中でサラリーマン風の首に腕をまわし、声にならない声をあげる。
男が動くたびにシングルベッドのスプリングがぎしぎし軋んで、その振動に興奮した。
頭に深い霧が立ち込めているような気分で、俺はわけもわからず目の前で恍惚と腰を振る男をあいしているような錯覚をおぼえる。
唾ちょうだい、と言うと、男はまるで征服したみたいな笑顔で、いいにおいのするリップを塗った唇から、唾をたらす。
意識が遠くなったり近くなったりするなか、その片隅で、最低だ、と、おもった。



それでもこの快楽からは逃げられない。



目の前のサラリーマン風が苦しげに声をもらしたのと、俺のきもちが濁って、こころの底深く沈殿していくような気がしたのは、ほぼ同時だった。





あいしてもいない男を、あいしているような気がして、必死に目の前の体にしがみついた事に対する後悔だけが、えんえんと残った。
快楽はほんのいっときだけで、すぐに跡形もなく、そこなわれる。
なんの意味もない一日として、そこなわれていく。





好きだったことよりも、傷つけてしまったこと。
あいしてると言ったことよりも、返事を躊躇ったこと。
会いたいと思ったことよりも、会いにいかれなかったこと。
お金を貯めて行けばよかったのに、貯められなかったこと。
知らない男と奇妙なセックスをしてしまったこと。二度と連絡もなかったこと。



ひとは自分の都合のよいことしか憶えていないなんて言うけれど、でたらめだと思う。
後悔だけは、確固とした記憶として俺のなかに刻まれつづける。今も、これからも。





飛行機が煙りをだしながら飛んだあと、そこにひこうきぐもが残るように、俺たちの人生は一直線で、たまにゆるやかなカーブを描きながらつづいていき、やがてうっすらと記憶から薄れていくけれど、後悔したことだけはずっと忘れられない。
俺自身が、なにを思い出すかといえば、いつも後悔したことばかりだ。
八月の夏祭り。
初めてつきあったひととの鬱屈とした関係。
たった一回セックスした男の息づかい。
人生はすべからく、後悔によって構成されていって、後悔のない人生なんてひどく味気ないものだと、俺は過去を受け容れた今ならそう思う。
受け容れるということは、乗り越えることだと思うから。





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