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バレンタイン :: 2015/02/19(Thu)

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おなじふとんでもこんなにちがうのか、と、ほとんど愕然とするくらい、実家と彼氏の家のふとんは、まるでちがう。



彼といっしょに買いにいったダブルのふとんと羽毛掛けふとんはニトリで、毛布はもともとあったもので、枕は俺のがホームセンターで3000円くらいで買った安物の低反発枕で、彼のそれは、東京にいったときにわざわざ予約して買いにいった代物だ。
日本橋にある、ロフテーという枕専門店だった。
首のカーブの深さを計測し、それを基にそのひとに合った枕をコンサルティングしてくれるお店で、彼も御多分にもれず自分に合うそれをみつけた。
一万円以上はするそれを、郵送で送ってもらって、「これでやっと首の痛みから解放される」と喜んでいた。
そもそもそんなところに予約までしていったのは、買うこと前提だったのだけれど。



俺は今更ながら、あのときいっしょに買っておけばよかったな、と、すこし後悔した。
でも枕に一万円はなぁ、と、どケチ根性丸出しでおもう。
いまの枕は特に不快ではないけれど、ときどき頭が " もちあがりすぎている " と感じるので、ほんとうは首のカーブが合っていないのかもしれない。
いまのところ寝違えたり首が痛くなることはないけれど。



実家で俺が使っているふとんは、その点ニトリの安物とはまるで違う。
祖母がむかし客人用として持っていたものを譲りうけたので、寝心地は最高で、きっと値段もずっと高い。
その祖母も、アルツハイマーを発症して施設に入ってしまった。
もうふとんなんて使わないし、なら貰っていきましょう、と、祖母の家の整理にいった母が勝手にもってきたのだ。
もっとも、まだまだ使える立派なふとんをみすみす捨てるのももったいないので、もってきてよかったとは思うけれど。
実家に寝に帰って、いいな、と思うのは、そのふとんの寝心地の良さくらいだ。
あとは、リビングでえんえん馬鹿話をくりひろげている母と妹の声がもうすこし音量をさげてくれればなぁ、と、おもう。
ふたりとも信じられないくらい大きな声で話すので、とても集中して本を読んだりブログを書いたりなどできない。





二月十四日、土曜日の08:30。
俺は目をさまし、まだまどろむ意識のまま窓に目をむける。



くもりガラスになっている窓のむこうは、清らかで鮮やかな水色で、いってんの曇りもない。
俺は眠るときにカーテンをしない。
だから起きたそばから、その日の天気がわかるので、雨の日なんかだと陰々滅々とした気分になってしまうのだ。
ガラスごしの水色は色紙のようにのっぺりとして、奥行きをうしなってまるで書き割りのようだった。
色そのもののあかるさのおかげで、それでも部屋の中まですこしあかるいようだった。





今日は、九時半ごろに妹の友だちが、その母親を引き連れてやってくる。
妹の修学旅行の説明会に行くために、どうせなら「いっしょに行こう」という算段になったらしい。
俺は妹の友だちはすこし苦手だ。
まえに一度、職場にひやかしに来た妹が友だちも数人連れてきて、その友だちの何人かが学生らしい非常識さ全開でうるさかったので、俺はめんくらったのを憶えている。
今日くる子は、そんな感じの子じゃないから、まだいいけれど。



「きたよー。行こうー」
妹が独特の、間伸びしたしゃべり方で言い、俺はすこし憂鬱なきもちになる。
学校なんて、何年ぶりだっけ?
十八のとき以来だから、五年ぶりくらい?
俺、いつのまにそんな年取ってたんだろう……。
ほとんど愕然としながら、俺は瞬時に考える。



玄関を出て、底冷えのするコンクリートの階段をおりて、迎えにきてくれた妹の友だちとその母親の待つ車に乗りこむ。
妹は制服を着ていて、たぶん平均的な女子高生よりすこしだけスカートが短い。




「おはようございます。すみませんわざわざ」
なるべく快活に聞こえるように、努めてあかるい声で母親のほうに言った。
母親は、いいえぇ~、とかなんとか言ってさっさと車を発進させる。
ふいに妹の友だちのほうを見ると、子どもが抱っこされて乗っている。
まだちいさい、一才くらいだろうか、それくらいの子どもが不思議そうにこっちを見ている。
俺は子どもは嫌いだ。
俺のその子を見る目がよほど怖かったのか、ものの一秒としないうちに泣き出してしまった。
あーあ。これだからガキは。
そんな悪態を心のなかでつきながら、早くおわってくれないかな、と思った。





妹の通う学校にいったのは初めてだったけれど、とりたてて言うことのない外観で、よくいえば素朴、ふつうにいえば薄汚い校舎はなんとなくむかしの陰鬱とした気持ちを思い出させる。
学生時代のじぶんと、数々の後悔。



妹がすれ違う友だちたちに、女子特有の甲高い声と、頬をなでるような上っ面な親しみをこめた挨拶を交わしているのをみながら、目の端々で、かわいい男子高校生がいないかさがす。
目にとまる男子生徒は、皆地味で、その地味さが子どもじみて幼い感じののこる地味かげんなので、とても性的な対象にはならないだろうな、といっぱしのゲイらしくおもう。



体育館と聞いていた俺たちは、けれど体育館ではなく校舎の三階の教室にとおされた。
「え!ここ靴ぬがなきゃいけないの?」
「そうだよ。そういや、しょご兄ちゃんのスリッパもってくるの忘れちゃった」
妹が言い、私立の学校なんてどこも土足なんだろうと思っていた俺はすこしだけビビった。
くつ下、適当なの履いてこなくてよかった、と思い、妹の同級生たちに俺はどう見えているのだろうと、ふと考える。
まさか彼氏なんて思わないだろうと思って、まわりの保護者は皆ちゃんと父親や母親なので、あきらかに俺はとりのこされたみたいな疎外感を感じる。



最初はすくなかった人も、徐々に増えていく。
教室はあっという間にいっぱいになって、座れない生徒まで出てくるのだから、やっぱり体育館のほうがよかったんじゃないの、と俺は胸の内でひとりごちた。
妹たちがきゃあきゃあ言いながら、かわいらしい包みを交換しあっている。
その包みを見ながら、あぁ今日はバレンタインだったな、と思い出した。
女の子たちが、女の子たちによる、女の子たちのためのお菓子交換をしているのをみながら、彼氏には何を買おうかとぼんやりおもう。
女の子たちの、こういうイベントでの同調意識というか、ある種の結束力は目を見張るとむかしからおもっていたけれど、まるでつい昨日のことのように繰り広げられていたその儀式がもう五年もまえで、いまここに居る女の子たちはあのころとちっとも変わらないテンションで、俺の知っているクラスメイトたちのように儀式をまっとうしている。
女ってすげぇなー、と、だからこういうときは彼女たちの労力をしずかに労う。
俺には絶対できないし。



旅行会社のひとたちと、先生数人が教室に入ってきて、女の子たちがぞろぞろとそれぞれの席に戻っていく。
こうして学校の机に座っていると、どういう顔をしていいかわからなくなって困惑した。





説明会は、ばかげたことに強制参加ではなかった。
つまり、俺は来なくてもよかったのに、今日わざわざ仕事前にこうして学校にきて、内容のしれた説明を聞かされているわけだ。
事実、保護者は誰も来ていなくて生徒ひとりの子も、ちらほらいた。
なんだよ、と思い、こんなことなら断っとけばよかったな、と考える。



説明の内容はだいたい予想していた通りのことで、妹を含めた生徒がざわざわと私語を交わしつつ、円滑に進んだ。
妹は関西•関東コースらしく、京都やディズニーランド、お台場がコースとして載っており、俺はそのお決まりの修学旅行コースに心のなかで、お台場かよ、と突っ込んだ。
妹も、「えー!!渋谷ないのぉー!!」などとまわりの女子たちと不満を言い、「マルキューって渋谷にあるんだよねぇ?」などと俺に聞いてくる。
お台場は俺もいったことがないからわからないけれど、 " 再開発の進んでいる港の近い都市 " 、みたいなイメージしかない。



「えーと!渋谷とか原宿も行っても大丈夫ですよー!ちょっと行き方が複雑なので、間違えないようにー!!」
添乗員のひとりだろう、旅行会社の女がマイクで言い、生徒たちがにわかに活気を取り戻す。
みると、配布されたパンフレットに路線図が載っていて、それをみながら生徒が口々に、何コレ?どう見るの?意味わからん、などと言っている。
小さい子どもを連れている保護者が多いみたいで、あちこちで子どもたちのすさまじい泣き声が聞こえたり止んだりしていた。



「渋谷ってどうやって行くの?」
妹が聞き、俺は路線図をみながら、どうやって行くのが一番早くて的確か複雑にからみあうそれを凝視して考える。
「ゆりかもめって電車に乗って、新橋まで行くじゃん?そしたら東京メトロの銀座線に乗って、それで渋谷まで行けるよ」
俺がぶっきらぼうに言うと、妹は意味がわかっているのかいないのか、ふーんと相槌をうつだけだ。
「アプリがあるから、それ入れとけばいいよ」
俺は電車の路線情報や乗り換え、時刻などの検索ができる地図アプリを妹に教えてやる。
それさえあれば迷わないだろうし、だいたい東京なんて行ってみないとその複雑さはわからないだろう。



その後の説明も、保護者が必要なレベルの内容とは思えないものばかりだった。
荷物の重量やキャリーケースの大きさの制限、ヘアーアイロンや充電器の注意点(アイロンだめなの? という妹に、コードがついてるのは大丈夫だから、と言ってあげた)、おこづかいの管理など、高校生にもなってこんなにこまかい説明が必要なのかとも思う。
だいたい、まわりの生徒たちの話し声のほうがうるさくて、添乗員の説明なんてほんとうに聞いているのだろうかと思うし、そういう説明なら保護者なんていらないじゃん、と俺は思う。
ホームルームで説明すればいいし、旅行の日程や新幹線の時間なんて説明されても、どうしろというのだろう。
だいたい、説明会自体が、どこかの保護者からの要望だったというし、そもそもやる予定のないことだったわけだから、話の内容もたいしたことない。



じっさい、説明会が保護者にとって特に重要な連絡事項を話すこともないまま、お開きになったので、俺はほとんど落胆した。
妹も、「これだけのために学校来たの?」などとぐちぐち言っている。
ほんとうにこれだけのために学校に来たなら、俺だって高校生のときそう言ったとおもう。
ともかく、他の保護者たちは無言で制服姿の子どもたちをつれて帰っていく。
俺たちも誰ともなく立ち上がり、廊下に出ると、北海道コースの教室はまだ説明会がおわっていないようだった。
教室の中から、いろいろな視線が飛んできて、気づかないふりをして目をそらす。



「帰りはバスだよ。弟を病院つれていくんだって」
妹が言い、ふーん、と思いながら、送ってくれた友だち一家に手を振る。
バス停まですこし歩いた。
風がつめたく、陽射しはあたたかい。
「うちの学校、超ボロっちいでしょ」
妹が言い、俺の母校を引き合いにだして「あそこは綺麗だし、中にコンビニもあるんでしょ」
と言ってくる。



俺はあいまいに返事をして、校舎が綺麗になったのは最近で、コンビニも俺が通っていたころはなかったけれど、とおもった。
保護者は来ていないんだろう男子高校生たちが、自転車にまたがり横をすり抜けていく。
ひとりも可愛い子はいないし、ここはほんとうに高校か、とおもった。



「ほら、あそこの交差点あるじゃん。あそこに車停めて盗撮してるおっさんがいたんだよ!まじきもいよね~」
妹が言い、この子とこうやって並んで歩いて話すのなんて、いつぶりだろうと、ふいに妙な感覚にとらわれる。
妹は歩きにくいのかなんなのか、ずっと俺の二の腕のあたりを掴んで歩いている。
小さいころ、俺よりもはるかに小さいこの子を連れていたのは俺だった。
あの頃は妹のことが嫌いで、よくいじめたのに、それでも俺のそばから離れなかった。
夜は母親は仕事だったし、ほかに頼れるひともいないから、しょうがないだろうけれど。



いつのまにこんなに大きくなったんだろうと思い、なんとなくその保護者くさい考え方を振り払いたくて、陽射しがまぶしいフリをして目をほそめた。
よく晴れていて、朝の水色の空とはまるでちがっている。
ほんとうに、今日が晴れの日でよかったとおもった。



バス停からバスに乗っているあいだじゅう、会話らしい会話もなかった。
ただ外の景色をみながら、このあと何時ごろに家を出て仕事に向かうか考えたり、建物の看板を意味もなく読んだりして時間をつぶした。
彼氏と車に乗っていると、よく意味もなく看板の文字を読み上げたりしている。
たまに変な名前の店や写真つきの選挙用ポスターが貼ってあったりすると、それをネタに笑うのが、俺たちの常だ。
ときおり乗ってくる乗客はどのひとも老人ばかりで、ほぼ100%の割合でIC乗車券をもっている。
田舎のバスはこの老人たちに支えられているんだな、と思いながら、俺ははやく家に帰りたいとおもった。
自分の家ではない。彼のいる、あの家に。





バスを降りても妹はずっと俺の二の腕あたりを掴んでいた。
まるで子どもがするみたいに、所在なげに。
制服姿の女子高生と、私服の年齢不詳の男がいっしょに歩いていて、まわりからはどう見えているだろうと考えて、その考えがほとんど意味のないばかげたことだと知っているから、すぐに考えるのをやめた。
家まではすぐで、無言で歩く俺たちはなんとなくちぐはぐで、気詰まりだと感じる。
なんとなく、子どものころに戻ったみたいで、それがひどく心許なくて。
子どものころ、頼りになるのは大人ではなくて、自分のそばに無条件についていてくれるものに親近感を感じてしまうように、妹も昔はそうだったのかもしれない。
そう思って、意味のない考えだ、と一蹴した。
もうすぐ家に着く。そしたらまた、いつもの会話のない、接点のない兄妹にもどるだろう。
それが一番、俺にとっては安心で過ごしやすい距離感だとおもうのだ。





「しょご兄ちゃん、今日もう帰ってこないでしょ?」
仕事が一時からだから、そのまえに昼ごはんを食べるとして、三十分まえ。家から職場までの移動時間がだいたい四十分で、髪の毛のセットを考えるともう十分。
すこし余裕をもちたいから、十一時半に出ればいいなと思い、準備しているときに妹にそう言われた。
「たぶん、帰らないよ」
たぶん、ではなく、帰らないよ、とただ言わないのに、特に理由はない。
「じゃあこれ、○○くんにもあげといて」
そう言って、さっき学校で女の子たちと交換していたようなかわいらしい包みの、けれどさっきのより心持ち大きいそれをふたつ渡して、妹はまたテレビのある部屋に戻っていった。
うちの家族は、俺の彼氏を " ただの友だち " だと思っていて、その友だちの家に転がり込んで居候している、と思っているらしい。
なので、彼はうちの家族とはふつうに顔を合わせる。
まるで " ただの友だち " みたいに、くっきりした笑顔で、こんばんは、なんて言って。



「……ありがと」
聞こえたのか聞こえていないのかわからないくらいの声量で俺は言い、そのままそれをバックパックに詰める。
帰ったら、彼にあげなきゃ。
でもあのひと、手作りって苦手だからなぁ。
たぶん食べないだろうけど、一口くらいは食べるかもしれない。
準備しおえた俺は玄関のまえに立つ。
俺は市販のやつでいいや。
去年もそうだったし、一昨年もそうだった。
たぶん彼のほうからはくれない。
なぜか、そういう役回りになっているのだ、毎年。
別にいいけどね、と、ひとりごちて、俺は玄関をあける。
外は朝とはまるでちがう雰囲気で、風もそれほどつめたくない気がした。






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