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I'm Not The Only One :: 2015/03/15(Sun)

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誰かの " 特別 " でありたいと願って、誰かに必要とされることで自分の価値を見出して、それでようやく生きていてもいいんだと納得したつもりになっていた時の自分を、否定するつもりも肯定するつもりもない。



ただ、生きていくことが誰かのためではなくて、自分のためなんだと、今ならわかるよ。
自分が幸せなら、それでいいじゃないか。
いまが幸せなら、それでいい。





13:40。
BGMは、Sam Smithで『I'm Not The Only One』





この気持ちが何なのか、どういうふうに扱ったらいいのかわからないまま、夏がきて、タンクトップから覗く細くて、けれど適度に筋肉のついた腕から目をそらしながら、秋がきて、徐々に色濃くなっていく夕暮れのせつなさや夜の乾いたにおいを感じながら、恋でもない愛でもないそれを知らんぷりし続けるのは、もう限界だとわかっていた。



俺がユウキの家に厄介になってから、彼に対する気持ちを整理できないまま時間だけが流れた。
夏から秋へとゆるやかに移り変わっていくのを肌で感じながら、俺はこのまま、どうにかやり過ごせないだろうかと期待していたのだ。
この、説明のできない(あるいは、説明したくない)感情が、いっときの高熱のように、やがて冷めて平常にもどっていくのを。



新しい家がみつかって、母親と、妹の三人で、そこに移り住んでからも、俺はときどきユウキの家に泊まりにいっては、隣で眠った。
ユウキからは、あいかわらずベビーパウダーみたいなにおいがする。
眠るときはきまって口をだらしなく半開きにして、そこから漏れるかすかな寝息に耳をすませながら、俺は自分が変質者になったような気分を味わった。
しずかに上下する胸、無防備にときどき発せられる寝言、寝返りをうったときにかすかに香るベビーパウダーのにおい。



一度だけ、眠っているユウキにキスしたことがある。
半開きになったままの唇は乾燥して色味をなくし、ぼやけた肌色で、男の子の唇らしくてすこしだけセクシーだとおもう。
そっと、でも起きない程度にしっかりと、自分の唇をおしあてる。
やわらかくて、あたたかくて、何の反応もしめさないユウキはまるで死人みたいにさっきと変わらない態勢のままぐっすり寝息をたてていた。
誰も知らない。誰も気づかない。
俺だけしか知らないキスは、俺をひどく孤独な気分にさせる。
目の前にいるのに、何の反応もかえしてくれないのなら、ひとりきりと同じだ。



キスしたとき、ベビーパウダーのにおいが鼻の奥にツンとつきぬけた。
それが余計俺をひとりにさせる。
それ以上触れることなんてできないし、触れたところで、この気持ちを説明することなんてできない。



うしなうよりは、隠しとおしたほうがずっと良いと、俺は本気でおもっていた。





ユウキのことを一言で説明するなら、「ちゃらんぽらん」だ。
物事を軽んじている節がままあるし、とんちんかんなことを言ったり、場の雰囲気とはまるでちがうテンションで、急にべつの話題に移ったりするので、ある意味でとてもせわしなく、そして自由だった。
俺はその自由さが好きだった。
ユウキはいつだって自分の独特なペースで行動したし、彼の偏狭で見通しのわるい価値観は中学生だった俺には、それでもただひとつの窓口だった。
世界との、窓口。
俺が唯一、やすらぐことのできて、気の置けない間柄で話すことができる、ただひとりの友だち。
友だち、と、まだ呼べるような気持ちだったなら。



だって、友だちにあんなひどい気持ちでキスなんてしない。





たとえばユウキに、ほかの誰かに接するように、やさしく気さくで、分け隔てない純粋無垢な感情をむけられると、俺はほとんど困惑してしまう。
うれしくないはずがない。
友だち以上の感情をもっている俺が、すこしでもユウキのそういう生ぬるいやさしさに触れていたいのは当然のことだとおもうし、すこしでも側にいられるのなら、そういう無差別なやさしさも受け容れるべきだ。



じっさいユウキはほとんど誰にでもやさしかった。
無頓着な相手にも必要以上に気さくで、人見知りとは無縁だった彼がどんどん新しい人脈を開拓していくのを、俺は黙ってみていることしかできない。
それは、ほんとうなら取るに足らない出来事のはずだ。
友だちが増えるのはいいことだし、誰とでも分け隔てなく交流できるのはすてきなことだとおもう。



けれど、と、俺はおもう。
けれど、他のひとに向けるようなやさしさを、俺に向けないでほしい。
俺には見せない顔を、他のひとに見せないでほしい。
彼女がいてもいい。
篠田さんが好きで、ユウキは生粋のノンケだと知っているから、だから女の子とつきあっていても構わない。
ぜんぜん問題ない。
ただ、他の男友達に、俺の知らない顔を見せないでほしい。
俺には向けないやさしさを向けないでほしい。
俺と居るときよりも、楽しそうにしないでほしい。



俺と居るときよりも、笑わないでほしい。



心の端っこで沸き上がる感情をおさえることができなかった。
俺は、完全に嫉妬していた。
自分以外の、誰か、べつの友だちと楽しそうにしているユウキを見るのが辛くなっていくことが、辛かったのだ。
女の子にとられるのはいい。
だけど、男友達にとられるのは、嫌だ。
自分がユウキのいちばんで、特別なのだと信じたかった。
けっして交わることのない気持ちでも、他のどの男友達のなかで、俺がいちばんであると思いたかったのだ。



ユウキがときどき、俺の知らないところで別の友だちと遊んでいるのを知っては、ばかみたいに打ちのめされた。
ほとんど泣き出しそうになったし、こみあがる拒否反応に吐き気すらおぼえた。
そのたびに俺は、自分を鼓舞して、どうにか正気をうしなわないよう努めた。
感情的になることに意味はないからだ。



もうすっかり秋で、ユウキの家がある住宅街は俺をうら寂しい気持ちにさせる。
のどかというより辺鄙な風情だった。
ときどき、ユウキとふたりで隠れて煙草を喫いに外に出ては、中身のない話をえんえんくりかえした日々を思った。
なつかしくて、ひどく平穏で、満ち足りた日々を思った。
誰かといっしょじゃないと、心地よいなつかしさは生まれないと思う。
ひとりぼっちで思い出すのは、孤独だった自分だけだ。
俺は孤独だったし、今またその孤独と対峙している。
自分ではどうしようもない、救われない気持ちを抱えて、ひとりぼっちでぼうぜんと立ち尽くしている状況を、誰かに説明して慰めてもらうこともできない。



そういうとき、俺は苛立ちばかり募った。
ユウキと一緒にいても、ほかの誰かが訪ねてくれば、彼はそっちのほうに気を取られてしまう。
それは俺にはちっともおもしろくないことで、ひとりで煙草を喫いに抜け出したりした。
秋空がきれいにひろがって、すみずみまで透き通っている。
いまこの瞬間、この煙といっしょに、このどうすることもできない感情が消えてしまえばいいのに、と、考えた。





知っている。
俺はきみにとって特別な存在じゃない。





最初から知っていたのだ。
特別なんかじゃない。
だって、俺は、ただの友だちだから。
どんなに頑張ったって、手も握れない。
眠っているときに軽くキスするみたいな卑怯な真似しかできない。
俺は無口で、気の利いた冗談もじょうずに言えなくて、誰かをたのしませることも得意じゃない。
ほかの男友達と居たほうが、ユウキにとっておもしろいことなんて、わかっているのに。
俺がいっしょに居たって、俺自身が苦しいだけだって、わかっているのに。



ひとりで煙草を喫いながら、俺はほとんど泣き出しそうだった。
ユウキは、きっと家で男友達と楽しくやっている。
俺とはちがって、おもしろくて、冗談が言えて、気の置けない間柄で相槌をうつことができる友だちだ。
俺は、もうそれすらできない。
それすらできないなら、一緒にいないほうがいいんじゃないか。



ゆっくり煙を吐き出しながら、俺は目に入ったそれが沁みて涙が溢れてくることを願った。
泣いたら、すこしは楽になれるんじゃないかと思った。
でも、それは届かない。
煙はゆらゆら空中を漂い、いつのまにか消えてなくなる。
たとえばこの感情に、恋とか愛とか名前をつけて、決めつけてしまえたら、叶わないものとして葬り去ることもできたかもしれない。
俺には、でもそれはできなかった。
臆病者で卑怯者の俺には、男が好きな自分を認められるほど、強くはなかったのだ。



「しょご?」
気がつくと、隣にユウキが立っていた。
俺はほとんど狼狽して、口を不自然にぱくぱくさせてしまう。
ひとりで立っている彼は、不思議そうな顔で俺をみながら、
「どこにいるのかと思った」
と、言った。
横に座って、セヴンスターに火を点ける。
「ケンジたちも心配してたぞ。なんかしょごの様子おかしかったくね?って」
ユウキはそう言いながら唇をまるくすぼめて、煙をはきだした。
輪っかになったそれは、唇からはなれてすぐにひろがって、やがて崩れ去る。
「そっか。別になんでもないよ」
俺はぶっちょうづらで言った。
ソッカ。ベツニナンデモナイヨ。



「今日、泊まってく?」
ユウキが言って、俺は彼の無自覚なやさしさを呪った。
こいつはいつだってそうだ。
誰にでもやさしいし、誰にでも同じ温度で接する。
しずかに笑いながら、俺は首を横にふった。
おどろいたことに、そのやさしさを俺は待っていたのだと気づいた。
触れただけで、すこしだけ、救われたような気にさせてくれるそれを、俺は転落していくみたいな気持ちで欲しがっていると。



隣に居たいとおもった。
どうしようもなく途方もない心持ちで、それでもこいつの側に居たいとおもった。
それが自分にとって、かえがたい幸せなのだと。
うら寂しい住宅街の片隅で、いつまでも縮まらない距離を確かめることしかできなかったとしても。




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