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まちぶせ(後編) :: 2015/01/31(Sat)

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昨日とはうってかわって、晴れた空が窓からもわかる。
東京は、雪が降っているらしい。





10:12。
BGMはBjorkで、『Black Lake』





女の子から何らかのアプローチをされるのは、ものすごく久しぶりだった。
だから、彼氏に「それ、怪しくない?」と言われるまで、そんなこと毛頭考えになかったので、俺はほとんど面食らってしまう。



「怪しいかなぁ~?」

俺はいぶかしげに彼氏に問いかけた。
だって、弟待ってたーって言ってたよ。



『弟待ってたのが仮に本当でも、なんで職場じゃなくてわざわざそんなところで聞くのかがわからない』

「そうかなぁ。そうなのかなぁ」

『絶対、きみに気があるとおもう』

「えぇ~!まっさか~。笑」

『わかんないよ!そんなの!』




半ばムキになりながら、彼氏が言った。
こういうとき、相手が男だったらすこしも面白くなさそうな感じでぶっきらぼうに喋るのだけれど、相手が女だと、さもどうでもいいというふうに、適当なことを言う。
そして、ひとの反応を伺って、楽しんでいる。
そういう男なのだ。俺の彼氏ってば。





『で、LINE、来たの?』

「うん。今してる」




クロダさんはLINEを交換して別れたあと、すぐにメッセージを寄越してきた。
目が痛くなるほどの絵文字と、画面越しからでもわかる感じの良さでもって、彼女はさっきの「まちぶせ」を弁解した。





『いや~待ち伏せみたいですみません!職場だとビビりなもので聞けなくて』

「別に、聞いてもよかったのに。笑」




俺は心の底からそう思いながら返信した。誰かに聞かれたからといって、何だと言うのだろう。




『緊張してしまう。笑 みんなには、内緒ですよ?明日は遅番ですか?』

そう返ってきたクロダさんからのメッセージを見て、彼氏がさらに色めきたつ。
「絶対それは気があるやつだよ!」と。




『それは絶対そうでしょ。じゃなきゃ内緒にしてくれなんて言わないって!』

「うーん。そうかも…」

『絶対その女、きみに気があるよ』




彼氏は確信をもっているみたいに強く言った。
からかっているような、馬鹿にしているような、そんな微笑をうかべて。


俺もだんだん、疑ってかかる。どうして職場じゃだめだったんだろう。仮に緊張してしまったのだとしても、他のひとが見ていない瞬間ならいくらでもあったし、ふたりで話す時間も、それなりにあったはずだ。
どうしてあそこで、待ち伏せしていたんだろう。どうして、誰にも内緒なのだろう。


とりあえず、返事をかえそう。
明日は遅番で、彼女は中番だ。そこから尚もクロダさんは話を進める。
今日のタイムセールのことや、晩ご飯のこと(とんかつを食べたと言うと、わぁ~とんかつ!おいしそう!と、ばっちり絵文字つきで返事がきた)、どのぐらい働いているのか、とか、好きな食べ物、嫌いな食べ物。


好きな食べ物を聞かれたときに、ついでみたく続けて、「女の子でもいいですよ。笑」と書かれてあって、ますます疑惑が強まる。
オンナノコデモイイデスヨ?



お茶を濁して返事をしたら、「男が好きとか?笑」と、茶化したような返事が返ってきた。
そう、俺は、男が好き。言わないけど。
まぁ、いいや。
そう、思うことにしよう。
気を取り直して、返事をうちこむ。こっちからも、質問してみる。
働きやすいですか? とかなんとか。



もし気があるのだとしても。
返事をうちながら、俺は思う。
もし気があるのだとしても、悩む余地などない。俺は男が好きで、彼氏がいて、女の子にはもう、そういう種類の興味はもてないのだから。





次の日も、その次の日もLINEがきたときは、さすがにおかしいとは思った。
他愛のない内容ばかりを次の日も、また次の日も。



「辞めても、連絡してもいいですかぁ?」



クロダさんはあいかわらず、絵文字や顔文字だらけのメッセージを寄越す。
ようやく、自分の身にふりかかった " 好意 " というものに目をむけてみた。
もう遠い昔のような感覚で、最後に女の子からそういう気持ちをむけられたときの事を思い出してみるけれど、思い出したからといって、なにか役に立つというわけではない。
むしろ、記憶が遠すぎて、あやふやだ。




ただ、自分にもまだ、女の子から好かれる要素が残ってたんだなぁ、と、妙に感心してしまった。
そりゃあ見た目は普通だし、特にゲイゲイしい振る舞いなんてしたこともないから、ふつうのひとが見ても " そっちの人 " だなんて、まずわからないとは思うけれど。




彼氏は、毎日くるクロダさんからのLINEを完全に「モーション」だと思っている(モーション、である。それって、死語じゃね?と、思うけれど言わない)。そして、それを心の底からおもしろがっている。
「あんまり優しくするといけないよ」と、ニヤニヤしながら言うから、じゃあどうしろって? と、言い返す。




「仕事いっしょなんだから変な態度も取れないでしょ」

『ふーん。まぁ、俺カンケーないしーいいけど』




完全に「面白いネタ」を見るような目で、俺を見ながら言った。
次の瞬間にはもうテレビに視線をうつして、からから笑ってる。
このひとも、俺が女の子にそういう関心がないと知っているから、こんなに平然とばかげたテレビ番組で笑っていられるのだろうな、とおもう。





『お疲れ様です!今日、夜ちょっと聞きたいことあったんですけど、時間大丈夫ですか?』

クロダさんはあいかわらず、毎日LINEを寄越す。
画面越しからでもわかる感じの良さでもって。


「夜?夜は友達と会うからちょっと忙しいかも~」

俺も、なるべくそういう事態は回避したいから、いちばんまともなやり方でお茶を濁しつづける。



『そうですかぁ。じゃあまた時間あるときにお願いします!』

「はいはーい」



この時には、もう、ほぼ確信だった。
告白されるな。そう思って、すこしも心がゆらがない自分がおかしくて、胸の中で笑った。
からからと、テレビを観るように。





クロダさんからまた次の日もLINEがきて、そのLINEで俺は、作戦を決行しようと決めていた。
作戦というのは、つまり、カマをかけてみるということ。俺に彼女がいるということにして、彼女がアクションを起こすのを防ぐ。そうすれば、クロダさんも余計な恥をかかずに済むし、俺も、なにも聞かずに済む。
ぜんぶ始めからなかったことにできる。
そう、おもっていた。




『お疲れ様です!今日私お休みなんですけど、時間あったりしますかぁ?』

ほら来た。そう思って、やや緊張しながら返事をうつ。





「今日はちょっと忙しくて!何かあるならLINEで聞くけど?」

『そうですか。うーん。直接聞きたいので、また会ったときにします。予定空いてる時があったら、教えてくださいね!』



クロダさんはこれから俺が言うことを聞いて、どう思うだろう。
でも、本当のことを知るよりはマシだ。そう言い聞かせて、返事をうちこむ。本当のことというのは、つまり、これから先ずっと、俺の予定が空くことはない、ということだ。




「うーん。彼女に知られちゃったら怒られちゃうから、休みの日とかは難しいかもです。休憩の時間とかなら聞きますよ!相談とかなら、あんまり役に立ちませんけどね。笑」




送信ボタンを、押す。送った!送ってしまった。
これで後は、クロダさんがどういう反応を返してくるかだ。
予想内の反応か、(彼女がいると聞いて、別の切り返しで返事を寄越すか)予想外の反応か(彼女のことを聞いて、やけくそになって自分の気持ちを打ち明けるのか)。




クロダさんから返ってきた返事は、俺の予想内の反応で、胸をなでおろした。



『そうなんですか。実は私、○○くんが気になってて。彼女とかいるんですかね?』



職場のちがうひとの名前を出して、クロダさんは切り返してきた。
ははーん、そうか、そういう手で来たか。
俺は思って、同時に安堵していた。
クロダさんが自分の気持ちを打ち明けずに済んで、同時に、彼女の体面がまもられて。
クロダさんはまだ、まだ数日、勤務がのこっている。
のこりの仕事を気まずいまま終えるのは、彼女だって嫌なはずだ。




「○○くん?んーどうだろう。多分、いないんじゃないかな…」

『そうですか…。連絡先とか知りたいんですけど、私こういうの本当だめで』

「みんなに聞くついでみたいな感じで聞いてみれば?そしたら結構聞きやすいとおもうけど!」




それらしいアドバイスのようなことを言って、何も知らぬ存ぜぬを貫き通す。
そうだ。このまま、知らぬ存ぜぬで貫き通せばいい。そしたら、誰も傷つかないし、誰も気まずい思いをしなくていい。
この調子この調子、と、俺はほとんど " しめしめ " と思いながら、LINEでの会話をつづける。




「そんな感じでいけば、きっと大丈夫ですよ!がんばって!」

『はぁい!ありがとうございます!また職場で』




また職場で。語尾には、いつもの顔文字。
クロダさんは、いつも可愛らしい顔文字をつかう。


彼氏が、「言ったのぉ~?」と、携帯をのぞき込む。
「カマかけてみれば?」と最初に言ったのは、彼のほうだった。





つぎの日のクロダさんは、いつも通りだった。
いつも通りで、きちんと仕事をし、わからないことは聞いて、真面目に取り組んでいた。
ただ、今までみたいに、話しかけてはこなくなった。
心なしか、表情もすこし暗いような気がする。



俺は俺で仕事をこなしながら、同情なんてするもんか、と、おもった。
同情なんてしたって、何の役にも立たないし、第一、(振ったわけじゃないけれど)振った張本人が相手にやさしい態度を取るというのは、すごく自分勝手で傲慢な気がしていた。


いい男ぶっているような気もするし、俺なら御免だ。
振っておいてやさしくなんてされたら、それこそ感情が持たない。決壊だ。




その日が、俺がクロダさんといっしょのシフト最終日で、多分これが終わったら、会うこともないのだろう。
そしたら、クロダさんも誰か、新しい良い人をみつけて、新しい恋でも、するのだろう。
それがいい。いい人なんだし、こんなノンケぶったオカマにくだらないカマをかけられるようなことは、きっとないはずだ。



罪悪感から、すこし自分を卑下してみる。
クロダさんの気持ちなんて結局聞いていないんだから、そんなことする義理もない気がするけれど。
そう思いながら、その日、結局ひとことも話さないまま、仕事がおわった。



みんなと一緒に帰るとき、クロダさんは一番離れたところを歩いた。
一度も、こっちを見なかった。





これでよかったんだ、と、自分に言い聞かせていた。
これでよかった。クロダさんの気持ちはわからずじまいだが、わかってしまったら、きっとお互い、すごく恥ずかしいと思う。
クロダさんの告白は玉砕におわることは決まっていたし、俺も、マヌケな御託をならべてあーでもないこーでもないと理由をならべて、断らなければいけないから。



だからクロダさんから一日ぶりのLINEがきたときは正直おどろいたし、その内容が、自分の気持ちの吐露だったから余計、ことばにしようのない気持ちばかりが溢れた。




『ごめんなさい。○○くんがどうとかって言いましたけど、本当はしょごさんのことが気になっていたんです。
でも彼女がいるって聞いて、咄嗟に…。すみませんでした!
また、今度はお客さんとして遊びにいきますね!一ヶ月ありがとうございました!免許、がんばって取ってくださいね!笑』




免許?免許って、なんだっけ。
すこし考えて、すぐ思い当たる。
あぁ、そういえば、車の免許を持ってないって話、したなぁ。免許ないんですか? ってびっくりした顔されて、なんでそんな顔すんの? ってこっちがびっくりしたなぁ。
免許ほしいって話したら、がんばってお金貯めましょう! って、なんか応援されたなぁ。
忘れてたなぁ。おぼえてたんだ。すげーなぁ。



そこまで思って、俺は、気づく。


自分の浅はかさを、心から恥じた。


言わなければ本当にならないし傷つかずに済む、というのは、俺のつごうのいい、勝手な隠れ蓑だったのだ。


当人にしてみれば、正直に言おうが言うまいが、おなじなのだ。
言わなくても気持ちがなかったことになるわけじゃないし、言わないから傷ついていない、というのは、こちらのひどい誤解なのだ。




ちゃんと失恋もさせてやらなかった。
ただ、気まずくなりたくないから、面倒くさいから、彼女がいるなんてくだらない回り道をして、クロダさんがどうしたいと思っているのか、考えたときなんて一度もなかった。




気まずくなるのも面倒くさいのも、ぜんぶこっちの都合だ。
向こうからしてみれば、まったく見当違いの判断かもしれないし、まったく馬鹿にした選択肢だったのかもしれない。



いずれにしろ、と、俺はおもう。
いずれにしろ、クロダさんは伝えたかったのだ。だから、わざわざこうして、本当のことを告白したんだろう。




言わなければ、俺が一生わからず忘れてしまうに決まっていることを、クロダさんは、否定した。



自分の気持ちに気づいてほしくて、知ってほしくて、すこしは心のどこかに引っかかっていてほしくて、告白したのだろう。
そして、自分が前に進むためにも、言って、吹っ切ってしまいたかったのだろう。



クロダさんじゃないから、クロダさんの気持ちなんて、わからないけれど。





わからないけれど、と、でも俺はおもう。


わからないけれど、でもちゃんと、伝わったよ。




「ありがとう。気持ちに応えられなくて、ごめんね。でもまた遊びに来て!それで、残りの出勤もがんばって!!それじゃあ、おやすみなさい」



そう返信して、俺は胸のなかで小さくため息をついた。
冬が、もうすぐで終わろうとしている。
春はいつのまにか、気付いたらやってきているだろう。
そのときは、彼女の心の中にも、きっと。






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ジャガランダさん

初めまして。コメントありがとうございます。
滅多にコメントのつかないブログなので、とても嬉しいです。笑


切ない、と言っていただけてガッツポーズです。笑
少しでも何か心に引っかかるものがあればいいなとおもって、このブログを始めました。
叶わない恋だって、きっと当人にとっては立派な恋だったんでしょうし、たぶん叶わなかったことのほうが心に深く残ることってありますよね。
この記事の彼女がそうだとは思いませんけど。笑
いい人だったので、幸せになってほしいな、と思います。


文章にはこだわっています。自分で言うのもアレですけど。笑
ただ書くだけじゃ、つまんないので。
すこしでも読む時間が有意義なものになればいいなと思います。


ぜひまたご覧ください。
またコメント待ってます。笑
  1. 2015/02/22(Sun) 09:20:35 |
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  3. しょご。 #-
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  1. 2015/02/21(Sat) 23:03:58 |
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