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煙草、ライター、思い出 :: 2015/02/01(Sun)

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何の為に、こんな生活してるんだろう。
中学三年生の俺は、胸のうちでへきえきとした思いを抱えながら自問する。
夏で、どこもかしこも暑さで空気が淀んでいて、俺には、帰る場所なんてなかった。





1月31日、0:23。
BGMはMazzy Starで『Lay Myself Down』





タツヤとユウキは中学校からの同級生で、たぶん、俺の人生ではじめて出来た友達だとおもう。



幼稚園のころからあまのじゃくで、スキモノだった俺は、友達と呼べるような存在なんてひとりも居なかった。
友達なんて、いらないと思っていた。


そのせいで、クラスメイトから奇異の目でみられていること、キャッチボールやサッカーをして遊ぶ友達もいないから、いつまで経ってもスポーツがこれっぽっちも出来ないこと、めったに笑わないから、たまに笑うとぎょっとされることー。



幼稚園から小学校の六年間は、俺にとっては暗黒期だ。
今からおもえば、よくあんな状況でひとりでやってこれたと感心すらする。
まるで難破船のように救い様のない俺は、ぶっちょうづらで、いつも心細くて、それでもひとりで頑張っていた。
誰かに頼るとか、誰かに寄り添う術を、なにも知らなかった。



中学二年生のときに、転機がおとずれた。
同じクラスになったヤンキーっぽい奴らと、何故か仲良くなった。
たぶん物珍しかったんだとおもう。そうでなければ、俺みたいな何考えてるかわからないような、ちょっと危ない感じの奴と仲良くしようなどと、誰も思わないだろう。
その中のひとりがタツヤで、隣のクラスだったユウキと仲良くなるのも、そう時間はかからなかった。



タツヤは " 天パ " 野郎で、ちゅるちゅるの髪の毛をよく弄るのがクセだった。顔は、Def Techの片割れの、日本人のほうによく似ている(彼をすきだと言っていた女子が、そう言っていた。丁度Def Techといえば、その頃が一番人気があったから)。
眉毛をすきバサミで整えていて、中学生のくせに妙に自然な感じでかっこよかった。
背伸びしている感じ、というのが全然なくて、そのいでたちとは異なる甲高い声で喋るのが、タツヤの気取りのない自然な雰囲気をよりうまく演出していた。



ユウキといっしょに、タツヤのおばあちゃんの家に泊まりに行こう、という事になったのは、中学三年生の、夏のことだ。
その夏は俺にとって、ひどく慌ただしい夏だった。
親の借金や家の問題、それに伴う住むところの問題、放置されていた問題が一気におしよせて、整理のしようがなかった。


それで、しばらくユウキの家だったり、他の友達の家だったりに身を寄せていた。
タツヤの家はいろいろと事情があって厄介になることはなかったけれど、おばあちゃんの家なら大丈夫だから、ユウキもいっしょに三人で泊まろう、ということになったのだ。



「おばあちゃんの家って、煙草喫えるの?」

俺は肝心なことを念を押すように聞いた。
中学生の分際で、俺たちは三人とも喫煙者だったし、それはある種の仲間意識のようなものでもあった。
中学三年生なりの、子供じみているけれど、その時なりの。



『大丈夫大丈夫!!ばあちゃん早く寝ちゃうし、部屋別々だから!ばあちゃんも煙草喫うから臭いもオッケーだし』

タツヤは無表情で淡々と言った。



『おっしゃ!じゃあ決まり!!』

ユウキが調子よく言う。お調子者のきらいがある彼は、けっこうマイペースで物事を進めたがる。



『じゃあ決まりな。夕方の七時に俺ん家に集合!!』

タツヤの号令で、その日はそういう段取りになった。
俺にとって、自分の家以外の場所にいるという状況は、一ヶ月以上つづいていた。





「おばあちゃんの家」と言っても、普通の団地の一角で、特に物珍しいことは何もなかった。
タツヤのおばあちゃんは無口で、だるそうに背もたれに腰掛けては、おっくうそうに煙草を口に運んでいた。
たぶん、タール1mm。細長くて、女の人がよく喫っているようなやつだ。

何も話さない。というか、何て言っているのかよく聞き取れない。
タツヤだけが、おばあちゃんの言葉に反応して言葉を投げかける。
こういうとき、やはり肉親というのは妙な繋がりでもあるのだろうか、と、訝しんでしまう。



やがて、そんなに時間もかからずにおばあちゃんの就寝時間がやってきた。
「あんまり夜ふかしするなよ」と、そんな感じのことを言って、寝室のほうに引っ込む。




待ってましたとばかりに、タツヤが煙草に火を点ける。
ユウキと俺もそれに倣い、それぞれ火を点けた。
他人の家で、しかもすぐ側に大人がいる中で、こうして不良っぽいことをしているのがスリルがあり、それだけで " 泊まり " っぽくて、面白い。




『しょごは、まだ家見つかんないの?』

タツヤが相も変わらず無表情で聞いた。
タツヤは、普段はわりと表情がない。




「うーん。どうだろ。親が探してるの知らないけど、多分探さないとやばいだろうし、どうにかなるんじゃない?」




「ふーん」とタツヤが言って、それぞれ各々の話をはじめる。特にこれと言って印象のない、内容のない話だ。
誰が何を言ったとか、あいつがこうだからこうしてやった、とか、そういうとりとめのない話だ。
何をどう話したのかも、いまとなっては思い出せない。



ただ、タツヤが話してくれた事で、ひとつだけ強烈に印象に残っている話が、ある。
タツヤのお父さんの昔の友人の話だった。


タツヤがまだ小さい頃、近所にとても親切で良くしてくれたおじさんが居たらしい。
そのおじさんはタツヤ一家と家族ぐるみでの付き合いがあったらしく、お父さんとは特に仲が良かった。
ある日、タツヤ一家が外にご飯を食べに出かけたら、テレビが点いていて、ニュース番組が流れていた。
「外食なんて滅多にしないから、すごい浮かれてた」タツヤは、そんなことには気がつきもしなかったらしい。
他愛もないニュースがだらだら流れていく中で、ひとつのニュースが、タツヤのお父さんの耳に入ってきた。
それを聞いて、彼のお父さんは急に動揺した様子で、
「なんでだよ!なんで!」
と叫んだ。
目には、涙がたまって、それがぽろぽろ溢れていた。



そのニュースの内容は、なんでも例のおじさんが、お金に関することで何かまずい工作をしていたのを、隣の家の人間にみつかって、口封じのために殺めてしまった、という内容らしかった。




『父ちゃんが泣いてるところ見たの、後にも先にもあの時だけだなぁ~』




タツヤはずっと無表情のまま、煙草をふかしながら言った。
タツヤのお父さんとは何度も会ったことがある。
とても明るいひとで、顔はタツヤそっくりだ。年中、坊主頭で背が高くて、怒るとちょっとだけ、こわい。



その話を聞きながら、俺は、人の歴史というものを考えていた。
俺が知らないだけで、タツヤのおじちゃんには、その犯罪を犯してしまったおじさんと、タツヤのおじちゃんの歴史があって、それは多分誰かが聞いたところで、一笑に付してしまう様なものだと思う。
誰かにとってはその男は犯罪者だけど、タツヤのおじちゃんにとっては、大切な友達だったのだ。
それは、それまでの時間があったからそうなれたけれど、それがなかったら、大して重要な人でもなくて、そのニュースでおじちゃんが涙することもなかったかもしれない。


同じように、俺にはタツヤやユウキの知らない過去があって、それは違う場所でずっと生きてきた彼らにはたぶん理解してもらえないけれど、それを承知でこのふたりが今、友達で居てくれているというのは、こそばゆい感じがするけれど、とてもありがたかった。


俺の親にも、今まで生きてきた分の歴史がある。
今は借金して、離れて暮らしているけれど、じきにまた、歯車が動き出すはずだ。
きっと良い方向にむかう。悪い事ばかりじゃ、ないはずだ。きっと。





煙草の煙を吐きながら、俺は虚空をみる。煙がぬるい空気にまざって、ゆらゆら揺れながら、いつまでも電灯のあたりを、漂っている。
蒸し暑い夜だ。風もなく、なにかの虫の声だけが、ちいさく延々と聞こえてくる。





つぎの日、朝から部活だというふたりと学校の前まで行って、別れた。
自転車でおばあちゃんの家まで来た俺たちは、自転車のまま学校までむかう。
顧問の先生がいたとき怒られないように、と、学校指定のヘルメットをきちんと持参してきていたふたりは、学校の門の前にきてから、それを被る。
その姿は、昨日煙草をくゆらせていた姿とは打って変わって、ひどく子供じみていて、思わず笑ってしまいそうだった。




「じゃ、部活、がんばれよ!」

『おおー。お前も気をつけて帰れよー』




タツヤが言い、ユウキも手を振りながら駐輪場のほうへ自転車を走らせる。
後を追うように、タツヤが「じゃーな!」と言って自転車を漕ぎはじめた。
もうこっちは振り返らない。


その後ろ姿をみながら、こうして朝から友達と、ちょっとした秘密を共有しているという感覚が、ひどく、くすぐったくて、嬉しかった。
この感じが、永遠に続けばいいと思いながら、俺はまたどこか、違う場所にむかって自転車をはしらせる。
自分の帰る場所ではないけれど、帰っても受け入れてくれる、場所にむかって。




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